2023年1月25日、文春オンラインより関東から全国に広がる連続強盗事件について、衝撃の報道がされました。
2023年1月19日に起こった狛江市の強盗殺人をきっかけに、全国で類似の強盗事件が起こっていることが見えてきました。実行犯の数人は逮捕されていますが、その上の指示役は何者でどこにいるのでしょうか。
文春の記者に事情を知るX氏から予告電話がありました。X氏の予告電話その後の取材をお届けします。
事の起こりはX氏からの予告電話「3,4日後に起きますよ」
X氏は文春の記者に「3,4日後に東京の調布市で強盗が起きますよ」と予告電話をしてきました。
文春の記者としてはこの時点では証言の真偽を判断することはできず、X氏の真意も測れませんでした。
しかし、3日後の1月19日、強盗殺人事件が狛江市の民家で発生します。狛江市は警視庁調布警察署の管轄内でした。
X氏から「ほら、実際に起きたでしょう。だけど、死人まで出してしまうとはね・・・」と連絡がきました。
多摩川土手に建つ地上2階、地下1階の住居のガレージにはベンツやマイバッハなどの高級外車が並んでいました。5年ほど前に越してきた大塩衣興さん一家は不動産業を営む長男と妻、成人した孫2人と5人暮らしでした。
1月19日の事件発覚が早かったのは、千葉県警から警視庁に「狛江市の住宅地が強盗に狙われている可能性がある」との情報提供でした。
1月12日、千葉県大綱白里市のリサイクルショップ「てんとう虫」で強盗致傷事件が発生しています。閉店間際に押し入ってきた男2人に「金を出せ」と十数発殴られ店主の内藤政行さん(76歳)が全治2週間のケガを負います。
翌1月13日、運転手役だった三重県陸自久居駐屯地に籍を置く中桐海知(なかきりかいち)容疑者23歳が出頭し逮捕されます。中桐容疑者のスマートフォンを解析すると、大塩さん宅の住所や「強盗に入る」といったメッセージがのこされていたことから狛江市事件発覚へと繋がります。
1月19日の狛江市大塩さん宅へ押し入ったのは、男4人組、4人は都内と相模ナンバーの2台のレンタカーで被害者宅に乗りつけ、およそ1時間で凶行におよび、レンタカーをパーキングに放置し逃走しています。
同一グループによる犯行は30~40件に上る
警視庁では特別捜査本部を設置しました。2022年から2023年1月の間に手口の似た強盗致傷事件・強盗殺人事件が多発し、関東近県だけでなく山口県や広島県でも見つかっています。
22年12月5日:中野区 3階建ての住宅に男7人で押し入り現金約3000万円を奪う
22年12月16日:渋谷区 男3人がブランドショップに侵入し370万円相当の貴重品を奪う
22年12月21日:広島市 買取専門店兼住宅に押し入り現金など約1000万円を奪う
23年1月9日:川崎市 1人暮らしの女性宅に男3人で押し入り現金1万円を奪う
23年1月9日:市川市 男3人が質店に侵入し腕時計なそ460万円相当を奪う
23年1月10日:足利市 1人暮らしの男性宅におとこ3人が押し入り現金約300万円を奪う
23年1月12日:さいたま市 女性宅に男3人で押し入り現金約12万とキャッシュカード3まいを奪う
23年1月12日:大綱白里市 リサイクルショップに男2人が押し入ったが店主の抵抗にあい逃走
23年1月14日:竜ヶ崎市 一軒家に男3人が押し入り現金約2万5000円奪う
23年1月14日:つくば市 一軒家に男3人が押し入り現金約80万と預金地通帳を奪う
23年1月19日:狛江市 一軒家に男4人が押し入り大塩衣与さんが亡くなる
同一グループが関与したとみられる強盗・窃盗事件はさらに多く、30~40件にもなるのではないかと見られています。
とうとう死者が出てしまい、急ぎ捜査が進められているところです。
実行犯の逮捕者が続々と「裏に指示役の存在」
狛江市の強盗殺人事件の関与で逮捕されているのは、石川県金沢市の永田陸人(ながたりくと)容疑者21歳です。
22年12月の中野区の強盗致傷事件の7人組の1人です。
永田陸人容疑者のスマートフォンからも中桐容疑者と同じく「狛江市」の住所や集合時間もメッセージが残されていました。狛江市の現場から逃走したレンタカーは永田容疑者が使っていたとわかりました。
永田りくと容疑者は競艇にのめり込み金に困っていた様子で、逮捕前には、近隣の男性に「お俺、もしかしたら捕まるかもしれん」と話していました。
捜査関係者は「彼らは寄せ集め。背後には共通した”指示役”の存在がちらついている」と話しています。
栃木県足利市の被害男性も「犯人の1人が携帯電話で指示役みたいな人と会話していた。『お金はない』と言ったら、電話の男が犯人たちに『殴っていいよ』話す声が漏れハンマーで殴られた」と証言しています。
X氏による告発「黒幕は日本人の男グループ」
X氏はなぜ狛江市の事件を予告できたのでしょうか。
関東在住というX氏と接触した文春の記者に「俺は全国で多発している強盗の”黒幕”から、相談を持ち掛けられていた。犯行を指示していたのは日本人の男です」と話しました。
連続強盗を差配する黒幕は複数人からなるグループで、その内の1人Aから協力を求められたといいます。
狛江市事件の4日前、X氏がAとやりとりしたメッセージには
「今週、叩き(強盗の隠語)があるんだけど、ドライバーを東京に寄こしてほしいです」
「レンタカーを借りて、現場には行かず、離れた場所に待機するだけです」
当初計画の18日、Aが焦りのメッセージを送ってきます。
「ドライバーはどうなりましたか。誰でもいいのでお願いしますよ」
「レンタカーを2台借りてきて、指定する場所に乗り捨てておくだけでもいい。乗るのは4人です。運転は実行がやるので」
運転役が見つからず焦っているようすがわかります。犯行は19日、X氏は結局、計画には参加せず、調布の方としか聞かされていませんでした。
黒幕Aが敬語を使っているので、X氏は相当な大物なのではないでしょうか。
レンタカー2台、4人というキーワードは事件後に明らかとなり犯行とも一致しています。
X氏によりますと「狛江市事件の後も、Aは何食わぬ様子でまたレンタカーを借りてくる奴がいないかを相談してきた」と話しています。
このAという男が平然としていられる理由はその居場所にありました。
黒幕Aの居場所は「フィリピンの収容所」
黒幕Aの居場所は、なんとフィリピンのルソン島マニラ首都圏にある「ビクタン収容所」だというのです。
※画像は文春オンラインより
不法滞在や刑事事件を起こした外国人が収容される場所です。
職員に金を払えば、スマートフォンも持てるし、冷房の効いた個室も与えられ、そこから日本へ犯罪指示ができるわけです。フィリピンではまだプリペイド式SIMカードのスマートフォンが使用可能で、足のつく心配はないということです。
なんと、そう話すX氏自身もこの収容所で過ごしたことがあり、収容所内にネットワークをもっています。
Aは40代前半で北海道出身、日本で詐欺事件を起こし、フィリピンからマカオに逃亡を計り、入管で身柄を拘束され収容。同郷で同年代の男ら数人で犯行を行なっているようです。
「奴らは暴力団の企業舎弟のような仕事をしていた時期もあり、Aは日本に強制送還されると懲役刑が確実なので、収容所から出たくない。」
「フィリピンで告訴されれば、フィリピンの法律で裁かれるのでその間は収容所にいられる。そうやって施設の中から犯罪を指示して金をため、いずれ第三国に逃げるつもりなんです」
「収益は収納代行業者を使うなどして、フィリピンに移動させている」
Aらが収容された2019年11月フィリピンを拠点にした振り込め詐欺の電話をかけていた”掛け子”36人が入管によって拘束され、一部ビクタンに収容されました。Aらは彼らを利用して収容所から特殊詐欺を仕掛けたようです。それと地続きにあるのが今回の連続強盗事件とみられます。
「特殊詐欺は世の中の対策が進み、相手を騙せてもATMから引き出せる金額には限度がある。だったら手っとり早く、叩き(強盗の隠語)に入った方が効率も実入りもいいだろう」と考えたのでしょう。
フィリピンからどうやって「個人情報の把握」
フィリピンからどうやって犯罪を指揮しているのでしょうか。
実行犯を募る方法は、特殊詐欺と同様のノウハウが転用され、ツイッターやインスタグラムで”高収入バイト”や”闇バイト”と書き込みます。金欲しさにダイレクトメールを送るとAの返信は
「うちの仕事は3%しか捕まる要素がない。もし捕まってもうちの弁護士が行くから問題ない」
その後、テレグラムに移行し免許証や保険証などの身分証明を持たせた自撮り画像を送信させて、個人情報を獲得します。
応募者が「1回きりでもいいですか」と質問すると、「もちろん、かまいません」と答えるが、「やりたくない」と言ったとたんに「警察に電話する」と、手の平を返します。個人情報を握られているうえに、相手の素性が一切わからないから怖い。
「金が必要でしょう。次もやりなよ」と取り込んでいくとX氏は語ります。
Aが実行犯とやり取りする時には漫画のキャラクターをコードネームに使っていたと記者は聞いています。「俺が知っているのは『ルフィ』『ハンマユウジロウ』『ミツハシ』」とX氏は話しています。
テレビ報道でも「ルフィ」や「範馬勇次郎」「三橋」という名前をつかっていたと報道されています。
X氏の取材当時まだテレビ報道はされていなかったということです。
リストの作成「アンケートや下見」
そのグループは事前にアンケートを装って電話をかけたり、下見をしたり、家の様子や家族構成、在宅の時間、資産状況などを調べてリストを作成していました。
今回の強盗事件はそのリストが再利用されたと思われます。実行犯の取り分は全体の3割でそれを人数で割る、残りがAのグループに入ります。
質店や貴金属店も標的になったのは「下調べした情報がある場所を選んでいる。高級時計のロレックスを狙い、襲う奴と売る奴は別々です」
X氏によると「Aは以前『叩きをやったんですけど、大変でしたよ。ま、成功しましたけどね』と自慢げに言っていた」と語りました。
やな感じですね。
2022年5月に起こった貴金属店強盗事件も闇バイト応募で知り合った者による犯行でした。これにもAのグループが関わっているのでしょうか。事件にはまだ解明されていない部分があり捜査は続いています。
なぜ、X氏は告発する気になったのか「安全圏でのうのうと」
X氏は今回、文春へ告発する気になったのはなぜなのでしょうか。
「日本でこれだけ強盗事件が続いていて、その黒幕は国外の”安全圏”でのうのうと過ごしてしている。実行犯を捕まえても、根っこを絶たないと、この連鎖は終わらない。その現実を知って貰いかたったのです。警察にも情報提供しています」と話しました。
Aらグループの先輩格に当たるであろうX氏の勇気ある告発に驚きました。
防犯ジャーナリストの梅本正行氏は「インターフォンが玄関の横についている家はドアを開けた瞬間い押し入れいやすい。いきなりドアを開けず、ドアガード越しに確認するのが鉄則です。見通しの良い外構にすべきです」と話しています。
ジャーナリストの多田文明氏は「1軒ごとの軽快には限界がある。混交グループは必ず下見をします。『不審な車があった』『怪しい人が家に来た』などの情報を近隣で共有していく。警察にパトロールをしてもらうなど、犯罪者に防犯意識が高く狙いにくい地域と思わせることが大切です」と注意喚起しています。
財産ばかりか、命まで奪うような輩が、逃げおおせることがあってはならない。と結んでいます。
実行犯の逮捕者
他の実行犯の逮捕者
和野正弘(わのまさひろ)容疑者34歳、すでに起訴されています。
中桐海知(なかぎりかいち)容疑者23歳
長谷川将司(はせがわしょうじ)容疑者26歳
山田雅也(やまだまさや)容疑者22歳
追記:新たな逮捕者
1月26日、新たな逮捕者が発表されました。
宇都宮市泉が丘、葛岡隆憲(くずおかたかのり)容疑者(25歳)
大阪府藤井寺市、大古健太郎(おおこけんたろう)容疑者(33歳)
北海道札幌市、建設作業員の石栗一樹(いしぐりかずき)容疑者(37歳)
愛知県豊山町、ホウジョウ・マクサンドリ容疑者(24歳)
埼玉県富士見市、芝田優人(しばたゆうと)容疑者(24歳)
東京都墨田区、真坂怜斗(まさかれいと)容疑者(23歳)
6人は2022年10月20日、東京都稲城市の住宅に宅配業者を装い押し入り、女性の首を絞め全治10日間のけがを負わせ、他の家族2人を粘着テープで縛り、現金3500万円と金塊などを奪っています。
金塊を買取店で処分した盗品等有償処分あっせん容疑で仙台市青葉区の真栄城健容疑者31歳も逮捕しています。
追記:ひるおび「特殊詐欺から強盗事件へ変遷」
特殊詐欺事件の変遷の過程、いたちごっこと言われる特殊詐欺です。
2000年初頭頃には、主犯格が自ら被害者宅へ訪れるリフォーム詐欺が横行し、35億円の売り上げを上げていたといいますが、主犯格が被害者と顔を合わせるリスクがありました。
2000年中頃になると、オレオレ詐欺が横行します。こちらも主犯格がグループとなり、直接被害者に会い高齢者をターゲットに芝居がかって追い込んで現金を受け取るという方法でした。
2010年になると、電話で振り込みを指示する振り込め詐欺が横行します。主犯格が被害者に合わないで現金だけが移動することで被害が増大しました。ATMで振り込みが10万円以内となったり、窓口の担当者やコンビニ店員の機転で阻止されることが多くなり、アナログ手法受け取りに行く方法に戻ります。
主犯格が被害者に直接接触するのはリスクが高いということで、受け取る役割だけをネット募集するようになります。指定の家へ行き受け取って来るだけで10万ですよというような募集で万が一捕まっても、トカゲのしっぽ切りで主犯格にはつながりません。
預かった現金は暗証番号式のコインロッカーに入れ、パスワードを取り次ぎ役に伝える、コインロッカーのカギを○○デパート男子トイレのタンクに貼り付けておくというようなやり取りです。
2019年5月タイのバンコクでと振り込め詐欺の掛け子15人が逮捕されました。
2019年11月にはフィリピンで36人の振り込め詐欺の掛け子が逮捕されました。
2020年に入ると、掛け子や受け子が捕まっても、主犯格まで捜査が繋がらないことが主犯格の自信につながり、手っ取り早く強盗事件が増えてしまったということです。
SNSで簡単に実行犯が募集できるのも主犯格にとって好都合のようです。
SNSでも”闇バイト”という言葉は使えなくなっていますが、高収入やバイトなどの言葉を規制することはできません。
地味にコツコツで良いのではないでしょうか。
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